2010年08月24日

西林克彦『わかったつもり〜読解力がつかない本当の原因〜』

読解法についての本。
理解と不理解の間にある「わかったつもり」という状態の罠について、わかりやすく解説してくれています。

国語の教科書に掲載されている、誰もが読みやすい文章を例に挙げて、人の陥りやすい漠然とした理解の仕方を明らかにしています。
「わかったつもり」状態が、「実はわかっていない」だけではなく、ミスリードも引き起こす可能性があると知りました。

私も、かなり「わかったつもり」状態でいることが多いと、改めて気付かされました。
読めば(なるほど)と思うことばかりですが、この曖昧な、認識しづらいことをクリアに文章化することは、なかなか大変な作業だったと思います。教育の専門家ならではの切り口でしょう。

「わかったつもり」の状態については、例文を多用し、様々な視点から細かく説明してくれていますが、おそらく本書の目的はその状態を解説することにあるため、その状態の克服法については、読み方の浅さを埋める「注意深く読む」という個人の読書上の注意程度にとどまっています。
「わかったつもり」の状態を知った以上、そこから「わかる」に至る解決策が気になる読者としては、あまり具体的なトレーニング法が紹介されていなかった点が、少々物足りなく思いました。

(読書後のまとめMindMap、8/24)

わかったつもり.jpg


(読書会でのお勧めMindMap、4/20)

西林克彦『わかったつもり』.jpg


(words)
「いろいろあるのだな」と認識した時点で、実は人はそれ以上の追及を止めてしまうのです。これが「『いろいろ』というわかったつもり」の魔力です。140

「わかったつもり」は、後から考えると不充分な状態であるものを意識できるのですが、その時点では「わかった」という気がしている、そんな状態です。142
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2010年06月29日

津本陽・板倉徹『戦国武将の脳−乱世を勝ちぬくブレインパワー』

戦国武将の脳.jpg
直木賞作家の津本陽と脳科学者の板倉徹が、戦国武将について、それぞれの専門見地から対談した本。
お互いの知識が組み合わさることで、通説に科学的解釈が加わり、興味深い内容となっています。
一人ひとりが独創的な特徴をもった武将たち。
それは、歴史作家の筆によるところも大きいと思いますが、脳から判断するという試みは斬新で、なるほどと思う指摘が多々ありました。

ただ、実際に武将たちの脳をCTスキャンにかけたわけではなく、「〜〜という性格だ」「それならば脳のそこここが発達していた」という流れのため、結局は通説をベースにして、それを事実とした場合の、脳の状態の可能性を論じただけのような気もします。

DNAや血液鑑定と違って、故人の脳鑑定は不可能なので、そこに事実性との関連の弱さを感じました。
脳の図が何度も登場し、各部位の特徴が記されていたため、この本は、武将の話を元に、脳の解説をすると見る方が正しいのだろうか?とも思いました。

専門外の脳の話はわかりづらくはありましたが、各章の最後にまとめが載っていたのが親切でした。
とにかく二人とも、専門の話がとても詳しくて、一読者としてそのレベルに到達しきれていないのが残念でなりませんでした。

<引用>
戦国武将は一瞬にして相手の力量を察知する直観力を持っていた、また鍛えていたといえます。さもないと戦国の厳しい時代を乗り越えることができませんからね。246
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2010年06月23日

山田真哉『食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字』〈上〉

食い逃げされても.jpg
数学が苦手、しかも会計はもっとわからない、と苦手意識を持っていましたが、『さおだけは〜』がベストセラーとなった著者の本ということで、わかりやすいかと読んでみました。

この人の著作のタイトルは、どれもどこか気になるものですが、先日本人と担当者さんがTVに登場し「タイトルは担当者さんのアドバイスで」と話していました。
『さおだけ』も、サックリ読みましたが、タイトルほどインパクトの強い内容ではなく、内心がっかりしていましたが、こちらはタイトル以上の面白さがありました。

章別に、数字のいろいろな特徴について例を挙げて説明してくれています。
著者自身、完全な文学人間で、数字が不得意ながらも会計士となったと知ったこともあり、少し、数字への苦手意識が改善されたような気がしました。

世の中には、「200%勝つ」「56億7000万年後に弥勒菩薩」「レモン1000個分のビタミンC」など、くらくらするような表現がたくさんありますが、数字の使われ方に意識的になることで、その表現のからくりがわかるようになれそうです。

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<引用> 数字がうまい人とは、数字を記号として見るのではなく、言葉のひとつとして、表現のひとつとして、積極的に使っている人のことを言います。73
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2010年06月10日

中沢新一『アースダイバー』

アースダイバー.jpg

東京の地形を縄文史学的に読み説いた本。
東京の歴史は浅く、江戸から始まるような気がしていましたが、そんなことは全くなく、大森貝塚などからわかるように、縄文期から人々の居住地帯となっていました。
今や、昔の面影がほとんど見られないメガロポリスとなった東京ですが、それでもやはり、江戸時代よりはるかに歴史をさかのぼった、縄文期の名残と繋がって、現在の都市形成が成されているという彼の主張に引きつけられました。

著者中沢新一氏は、宗教学者というイメージが強いため、(なぜ人が地形学的な本を?)と不思議でしたが、都市論の中にしっかりと土着宗教への考察も取り入れており、彼ならではの一冊となっています。
タモリが夢中になったというわけがよくわかりました。

東京近郊に住んでいながらも、長い間苦手意識を持っていた私。それは、超近代的な町並と忘れ去られたような廃墟が一つ所に共存している、ギャップの大きさが理由のように思います。
縄文期について、自分にはとても理解の及ばない、遙かかなたの時代に思えていましたが、有史以前からずっと変わらない土地の上に自分が立っていると思うと、不思議な浮遊感を覚えます。
江戸時代から突如脚光を浴び、栄えだしたこの場所の、それ以前のあり方を想像することで、この街に漂う漠然とした威圧感が少し克服できるような気がしました。

巻末には、Tokyo Earth Diving Mapがついており、沖積台地と沖積低地が色分けされています。
遺跡や古墳、墓地のマークもあり、視覚的にわかりやすくなっています。

この本はとても興味深くて、1週間ほど時間をかけ、じっくりと腰を据えて読みました。
私の住む横浜でも同じような本を出してほしいと思います。

<引用>
物事の真の意味はずっと後になって、全体の結果がすっかりできあがったとき、はじめてあきらかになる。228
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2010年06月09日

鈴木眞哉 『戦国時代の大誤解』

戦国時代の大誤解.jpg

学校で習った歴史事項は、その全てが真実だと思っていましたが、これまでの歴史の全てが明らかになっているわけではなく、少しの資料と伝説による推測にすぎません。
研究を進めるうちに、いろいろな新しい発見があり、これまでの通説の間違いが明確になったりします。
この本は、誰もが知っている歴史上の人物や事柄のエピソードについて、通説と実際との違いを教えてくれます。

いつの世も、歴史作家は、事実に脚色を混ぜて、ドラマチックでおもしろい話に仕上げますが、それがいつしか真実にすりかえられているところも多々あるようです。
あとは、戦の勝者が、自分に都合のいいようにすべての話を塗り替えてしまったり。
特に神様になった徳川家康のことは、誰も悪くは書けないので、歪みが生じてしまいます。

歴史は、過ぎた時の記録ですが、そこに脚色された伝説や解釈の違いが入るため、全ての人にとっての真実を残すことはとても難しいことなんだと思いました。
私たちの生きるこの時代も、未来にはどんな風に受け止められるのか、誰にもわかりませんね。

信長の「是非もなし」のセリフの意味が、ずっと気になっていましたが、新解釈を教えてもらえて、スッキリしました。

<引用>
なにごとにも正しい答えが必ずあるというのは、択一式試験の話であって、生の歴史の世界に通用するものではない。205
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