2014年03月15日

『いざ志願!おひとりさま自衛隊』岡田真理

シリアスな体験がライトに語られています。



映画やテレビでは決して伝わらない感触。生きている、本物の銃だからこそ、実用の機会だからこそ塗られている油。(p43)



表紙が『もしドラ』並みのかわいいイラスト。
自衛隊も、萌えキャラができたと聞くし、こういう路線になっているのでしょうか。
普通ならまず読まないだろう自衛隊の本でも、この表紙なら対象設定読者の幅が広がっている気がします。

厳密には、自衛隊というよりも予備自衛官補の話。
普段は自宅待機で、有事の際に自衛官として従事する人がいるというのは知っていましたが、その資格者は結婚・出産などで退職した自衛官なのかと思っていました。
一般公募しているんですね。

この著者は、失職をきっかけに、この世界に飛び込みます。
もともとライターさんなので、文章もわかりやすいもの。
身体を張った体験レポートになっています。

自宅待機とはいっても、自衛官であるために、きちんと訓練を受けます。
そのハードな日々が語られます。
自衛隊の訓練は過酷ですね。特に屈強でもない女性の著者には、それだけ体力的に負担がかかります。

迷彩服にヘルメット姿でフル武器装備をした状態で、腕立てをするそうです。
それは射撃の寝撃ちで起き上がるときに腹筋が必要であるため。
そうした訓練を重ねていくと、どんどん身体に筋肉がついていくのだとか。

著者が初めて銃を握った時の描写が、リアリティたっぷりでした。
油でベトベトだそうです。
観賞用ではなく実用武器だからこそ、油が塗られているというわけです。
これは、いくら本や映画で馴染んでいても、実際に銃に触ってみないとわからないものですね。
戦うための訓練なのだ、と読んでいる側も重く受け止めます。

その描写に著者は「はじめて〜の銃〜」なんてタイトルをつけています。
いたって軽快に書かれており、実際には過酷さを極める訓練の様子も、ライトに読み進めていけます。

ちなみに著者、金属アレルギーで、銃を触るのは大変だったとのこと。
そういえば銃って金属なんですね。ここは思い至りませんね。

希薄催涙ガスを吸う訓練の時には、喘息とレーシック経験者は参加できないのだそうです。
レーシックの目にはとてつもなく危険なのでしょうか。

自衛隊にいる間は、とにかくすべてが団体行動下にあり、個人が勝手なことをすることは許されていないそうです。
まさに軍隊ですね。
その訓練に慣れたあとで、社会に戻り、電車の中でお化粧をしている女性を見ると、非常に気になるとのこと。
ある意味、逸脱行為にもとれるのでしょう。
訓練前と後で著者の視点の違いが書き分けられている点が、興味深いところです。

挙手の敬礼は、陸海軍すべて共通かと思ったら、それぞれ異なるそうです。
海自はほかよりもコンパクトだそう。
その理由は、艦内が狭いから。納得です。

自衛官は「武士は食わねど高楊枝」でいなくてはいけないことや、あさま山荘事件での機動隊員のカップヌードルのエピソード、特殊作戦軍の存在など、面白い話がいろいろとありました。

以前ならば、戦争と結びつけてとらえていた自衛隊ですが、有事の時に出動するのも彼らの大きな仕事。
東日本大震災の時にも、予備自衛官は招集されたことでしょう。
冷たい海に腰までつかって、海をすくって被災者をを探していた自衛隊員たちの映像が忘れられません。

自分とは違う、体力に自信のある人が選ぶ道かと思っていましたが、著者のように普通の体格の人も大勢志願していると知り、もっと身近なものなんだと気がつきましたし、自衛官たちは、日々ハードな特訓を重ねていることを知って、頭が上がらないなと思いました。
明るい筆致で予備自衛官補の訓練全般について紹介されており、最後までテンポよく読めました。
posted by Lily at 23:20| Comment(0) | TrackBack(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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