2014年03月19日

『クラバート(下)』オトフリート・プロイスラー

絶望の中にいても、恋と友情さえあれば。

クラバート(下)

プロイスラー
偕成社


「心の奥底からはぐくまれる魔法がある。愛する人にたいする心配からうまれる魔法だ。なかなか理解しがたいことだってことはおれにもわかる。でも、おまえはそれを信頼すべきだよ。クラバート」 − 322ページ



強力な魔法使いに仕事でこき使われ、逃げないように常に監視されている弟子たち。
そうした逆境の中でも、クラバートはめきめきと魔法を身につけていきます。
2人の仲間を大晦日に失い、悲しみと疑問を感じながら過ごす3年目。
彼は、親方に目をかけられる反面、警戒されるようになっています。

親方も、どうやら大親方に命を握られている存在。
自分の命を脅かす種は、すぐに摘みとってしまいます。
特に弟子の恋人には、弟子を自由にして親方を倒す力があるため、親方は弟子の恋をかたっぱしから潰しにかかります。

殺された仲間の忠告を胸に、細心の注意を払って恋を育む彼。
しかしそれだけでは、強力な親方の魔法には太刀打ちできません。

彼の味方となるのが、弟子の仲間のユーロー。
普段は間抜けキャラですが、実は頭脳明晰で、打倒親方の機を伺っているクールガイです。
ひそかに魔法の技を磨いていく二人。

ついに親方と決別した彼は、その年の大晦日の死を宣告されます。
頼りになるのは、恋人の愛と勇気、そして自分の魔法。
ところが、親方の策略により、魔法が使えないという大ピンチに陥ります。
この絶体絶命状態から、どう抜けだせたのか。

ドラマチックなシーンですが、前半に比べて、後半はめまぐるしいほどに話が展開していき、スピードの変化にあわてました。
せっかくの見せ場なので、もう少しじっくりと描写してもらいたかったのですが。

大ヤマを越えて、収まるべきところに収まったエンディングですが、前編からの謎は、ほとんど解明されないまま残ってしまいました。
大親方って何者だったんでしょう?
死のうすで何を引いていたんでしょう?人骨?誰の?
モヤモヤが残ります。

ジブリの『千と千尋の神隠し』や『ハウル』を思い出しました。
顔が人間のまま、鳥になって飛ぶというところや、ゼニーバの髪留め、ラストに両親を当てるシーンなどを。
謎をあえてそのままにして、見た人にいろいろと考えさせるという形も、似ているようです。

魔法ものですが、最終的には魔法よりも愛情が強いという形で終わる点は、ハリポタ的。
ただ、親方の死により弟子たちの魔法の能力もすべて失われてしまい、彼らは普通の人間に戻って生きていくことになります。
物語の先に、現実の見える終わり方でした。

常に毅然とした態度の村娘のカッコよさ。
陰気な水車小屋に向かい、親方の前に立っても臆することなく平然としています。
愛の強さでしょうか。

頼りになるユーローの存在も、この物語に光を与えています。
常にさり気なく守ってくれる彼の存在なくしては、クラバートが親方に勝てはしなかったでしょう。
これは民話を基にした作品で、オリジナルではユーローは単なる間抜けな人物のままだとのこと。
作者のひねりが利いています。

謎めいたザクセン地方の風土の雰囲気に満ちた物語世界を堪能できます。
posted by Lily at 18:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 童話・伝説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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